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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
2017年10月15日更新

陥入爪と巻き爪に対する世界の治療法2 --- 手術

 
 日本では爪矯正はほとんど行われず、鬼塚法かフェノール法が行われています。世界中で行われている色々な手術方法を歴史を含めて紹介します。私も爪矯正を始めるまで、数十例の爪の手術を行いましたが、この手術は多くの問題点が有ることを強調したいと思います。

 爪を狭くする手術に対して根治手術、つまり再発しない手術と呼んでいますが、正常な爪でも原因を作れば巻き爪になります。爪は髪の毛と類似の構造であり、常に伸びていますから、根治治療などは実は存在しないのです。爪矯正の場合、再発しても程度が軽い時期ならば短い期間で矯正されます。爪矯正で一度治癒した患者さんは再発しても、手術を受けようとするは人はいません。
  • 部分抜爪(partial nail avulsion)
    • 爪トゲの切除 爪のトゲが軟部組織(肉)に刺さると激しい炎症、肉芽が生じます。トゲを取ると、一時的に痛み、炎症は治まりますが、約3週間くらい後に爪が伸びてきて同じように痛みます。
    • 爪郭爪母楔状切除術(labiomatricectomy) 爪母から爪の幅を狭くします。
      • Emmert-Plasty または Emmet -Platy(Carl Emmert 1884, Emmetは別人、ドイツ語圏での呼称)
      • Wattson-Cheyne's operation (1912, Fowler 1958,Mogensen1971)
      • DuVries法 (DuVries1959)
      • 鬼塚法 (鬼塚1967) 日本での呼称
      • フェノール法 (phenolization) (Ross1969, Wee1969,)
      • 児島の I 法 、II 法 (児島1978)
      • Cul-de-sac obliteration法 (尾郷賢)
      • レーザー法 (Matricectomy using laser)
  • 全抜爪(total nail avulsion)
     爪を完全に剥がします。
  • 碓井法 (碓井良弘1982)
  • 宇田川法 (宇田川晃一1985)
  • 爪床爪郭弁法+後爪郭形成術 (堤正彦1993)
  • 人工爪(東1993)
    局所麻酔をかけてプラスチック・フィルムをアクリル・セメントで爪の下に張り付けます。
  • 皮膚移植によるピンサー・ネイルの矯正 (Brown RE. 2000)

鬼塚法 ( Onizuka's labiomatricectomy )

 指神経ブロック、局所麻酔を注射します。

 指の付け根にゴムを巻いて駆血、つまり血を止めます。
 

爪の縁を爪母(爪の根)から切除して爪の幅を狭くします。生えてこないように、鋭匙(curette)を用いて末節骨の骨膜も切除します。


マットレス縫合を行います。皮膚はなるべく爪の下に入れます。

術後です。術後1-3週間で抜糸し、入浴できます。
○利点:
  手術は健康保険が適応されます。フェノール法と比べて、爪母の切除範囲を狭く限定する事ができます。
×欠点:
術後の痛みが強く、特に両足の手術では入院で行うこともあります。残った爪は巻いたままです。爪矯正では爪の幅を狭くしませんが、この手術では爪の幅が狭くなり、見栄えか悪いばかりでなく、力が入り難くなります。特に両側の陥入爪では爪の幅が1/3位になってしまいます。爪母を切除するのですが、小爪が伸びてきて再発する事があります。

 25歳女性、4年前に鬼塚法の手術を受けています。手術は正しく行われていますが、切除したはずの爪母から小さい爪が伸びてきています。このように、肉眼的にどんなに上手く手術をしても、爪母細胞は再生することがあります。

 60歳女性、5年前に鬼塚法の手術を受けましたが、切除したはずの爪母から小さい爪が伸びてきています。

手術を上手く行えば良いとする研究者もいますが、具体的にどうすれば良いのか論文に記載が無く、結果としては何度も手術を繰り返すことになってしまいます。


フェノール法 (Nail edge excision with phenolization, Phenol and alcohol chemical matrixectomy.)

 指神経ブロック、局所麻酔を注射します。

 指の付け根にゴムを巻いて駆血、つまり血を止めます。

爪の縁を爪母(爪の根)から切除して爪の幅を狭くします。生えてこないように、鋭匙(curette)を用いて末節骨の骨膜も切除します。ここまでは鬼塚法と同様です。爪母にフェノールを塗ります。2-5分間待ちます。

無水アルコールと抗生物質入り生理食塩水で洗浄します。縫合は行わずに開放創にします。術後2-4週間で傷が乾き、入浴できます。

○利点: 術後の痛みが軽く、外来で行えます。手術は健康保険が適応されます。

×欠点: この手術では爪の幅が狭くなり、残った爪は巻いたままです。爪の固定が不安定になり、伸びる方向が変わることがあります。爪母をフェノールで焼灼するのですが、小爪が伸びてきて再発する事があります。再発率は研究者により、まちまちです。

27歳女性、10年前にフェノール法を受けています。この方法にしては良好な結果ですが、当然のことながら爪の幅が狭くなり、残っている爪も巻いています。この後で爪矯正を受けました。


前例の反対側の足の親指です。この爪の幅が正常です。
フェノール法では爪の幅が狭くなり、爪の弯曲は治せないという本質的な問題があると考えます。

82歳女性、8年前にフェノール法を受けました。他院の例なので術前の状態は不明ですが、しだいに爪が横を向いてしまったと推測されます。爪の幅が狭く、爪床との接触面積が小さくなるために、不安定になって少しずつ向きが変わったと考えられます。

これほど極端な例は稀だと思いますが、薬で爪母を灼くために、程度のコントロールが難しい事が、この方法の問題点であると考えます。

極めて稀ですが、爪の近位、爪母まで強く巻いている例では爪矯正では数カ月から、数年と長期間掛かるので、鬼塚法、フェノール法は最後の手段として有用です。

レーザー法 (Matricectomy using laser)
 爪の幅、約1/3を爪母から生えなくする手術の一種で痛みが少ないと言われています。どの手術方法でも局所麻酔を使うので手術中の痛みは無いのですが、その後、数日間は激痛があるのが問題でした。レーザーを使って術後の痛み、腫れを減らす工夫です。レーザーの特性をうまく使っています。従来の陥入爪手術があまりに痛いので開発された方法です。レーザー法を含めて、私は爪の幅を狭くする方法は出来るだけ使いません。

特に爪の軟らかい若年者はマチワイヤを使えば、爪矯正に良く反応しますから、手術の必要性は極めて小さくなりました。


全抜爪(total nail avulsion)
 爪を完全に剥がします。 その後、爪矯正を行わないと、ほとんどの場合、新しい爪が再び巻いてしまいます。強い感染がある場合には緊急避難として行わざるを得ません。

爪を生えなくする手術後の写真です。爪が無ければ、まわりの軟らかい部分が上に持ち上がってしまう事がわかります。

長期間にわたり膿が出ていたため、数回の手術の後、最後に行われました。

皮膚移植によるピンサー・ネイルの矯正 (Correction of Pincer-Nail Deformity Using Dermal Grafting.)
 2000年に発表された新しい手術方法です。ピンサー・ネイルとは強い巻き爪のことです。指神経ブロック、局所麻酔を注射します。移植のための皮膚片を鼡径部からとり、完全に抜爪します。爪の下の軟部組織(爪床)にトンネルを造って皮膚片を通します。爪のあった位置にシリコン・シートを置いて新しい爪が伸びてくるのを待ちます。Brownらは6症例にこの手術を行い、ほぼ満足できる結果であり、1例は片方が再発してきている。と報告しています。

文献 : Brown_RE; Zook_EG; Williams_J, Correction of Pincer-Nail Deformity Using Dermal Grafting. Plast Reconstr Surg, 105: 5, 1658-61, 2000

 私(町田)の意見としては、手術で爪を平らにしようとすれば、このように複雑な方法をしかないでしょう。アメリカの形成外科医は徹底した手術を行うものだと感心しました。マチワイヤを使用すればこの手術は必要無いと思います。

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