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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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2020年3月8日更新

第1ケーラー病に関する質問集

 極めて稀な病気ですが、試験に良く出るので整形外科医なら名前だけは必ず知っている有名な病名です。ところが、名前だけ知っていても治療経験のある医師は少ない病気です。
第1ケーラー病とは?
写真、第1ケーラー病の痛みの位置  足の舟状骨が変形してくる原因不明の病気です。主に3から7歳くらいの男児に多く始まります。

 自然に治る病気なので、中敷きを作って痛みを軽くして、他の病気が無いか時々X線写真で確認しておけば良いでしょう。万一、痛みが残った場合には別の病気を考える必要があります。


第1ケーラー病の症状、X線写真は?
ケーラー病のX線写真

写真の矢印 (<----) は舟状骨の位置を示しています。

 土踏まずに痛みがあり、足の外側に体重を掛けて歩きます。 土踏まずが腫れる事もあり、押すと痛みがあります。足の形は正常で、関節の動きは障害されません。

左足、7歳男子の両足の正面X線写真です。左足の舟状骨がX線写真で扁平に見えます。健側である右足と比べると明らかです。両足に発生する例もあります。

xp Kohler 1st 右足、第1ケーラー病の3歳男子の両足の正面X線写真です。この年齢では良く見えません。

xp Kohler 1st 拡大写真です。右舟状骨は明らかに小さく見えます。

xp Kohler 1st 側面写真です。矢印が右足の舟状骨です。

xp Kohler 1st 側面写真の拡大です。健側と比べると右舟状骨は明らかに小さいです。

第1ケーラー病の自然経過は?
xp Kohler 1st

xp Kohler 1st 6歳男児 健側と比べると右舟状骨は明らかに小さいです。右足の土踏まずの強い痛みで来院しました。

xp Kohler 1st オーダーメイドのインソール(中敷き)で痛みは軽くなり、半年でなくなりました。 1年8ヵ月後のX線では左右の舟状骨の差はほとんどありません。

第1ケーラー病の治療は?
xp Kohler 1st 私の場合にはドイツの整形靴または厚い中敷きの取り外せる運動靴を用いて、オーダー・メードの厚い中敷きを使います。中足部のバッド(指し示している位置)を着けた厚い中敷きにより舟状骨、土踏まずへの体重負荷を減らします。数ヶ月から数年で痛みも、X線写真上の変化も消え障害は残りません。

第1ケーラー病の歴史は?
 1908年、ドイツの放射線科医である、Alban Kohler(oはウムラウト) (1874-1947) により報告されました。原因不明の舟状骨無腐性壊死とされていますが、私は成長期の一時的な発育障害であると考えます。日本では子供靴は安くて、軽いのが好まれますが、活発な男の子が底の薄い、軽い靴を履くのが原因の一つであると思います。ドイツ人の発音を聞くと、私には"ケーラー" より "クーラー"と聞こえますし、ケーラーと発音しても通じません。

 第1ケーラー病は無腐性骨壊死の一種と言われており、無腐性骨壊死と言うと非常に重篤な変化が骨に起こっている印象を持ちますが、特に後遺症を残しませんから他の骨壊死とはまったく違う病態です。足に関しては3つの無腐性骨壊死つまり、第1ケーラー病、第2ケーラー病 (フライバーグ病)、シーバー病が有名ですが、このうち第2ケーラー病は障害を残す事が多いです。

文献
Ippolito-E; Ricciardi-Pollini-PT; Falez'-F(USA), Kohler's disease of the tarsal navicular: long-term follow-up of 12 cases. , J-Pediatr-Orthop. 1984 Aug; 4(4): 416-7
「足舟状骨のケーラー病 : 12例の長期経過」
 <抄録> 第1ケーラー病12足について診断から、平均33年間、追跡調査しました。すべての例で症状は残りませんでした。治療には平均8ヵ月掛かりました。痛みが取れるまでに膝下ギプスでは3ヵ月、アーチサポートでは7ヵ月掛かりました。

Borges JL, Guille JT, Bowen JR (Alfred I. duPont Institute, Wilmington, Delaware, USA), Kohler's bone disease of the tarsal navicular, J Pediatr Orthop 1995 Sep-Oct;15(5):596-8
「足舟状骨のケーラー病」
 <抄録> 第1ケーラー病16足について診断から、平均31年6ヵ月間、追跡調査しました。膝下ギプスが症状の期間の短縮に有効でした。2例に症状が残り、1例は足根骨癒合症、1例は大きい外脛骨でした。残りの12例は良好でした。

町田英一,特集,最近の骨壊死の診断と治療,足,距骨骨壊死,Kohler病,関節外科,19(5),120-123,2000


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