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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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2020年3月18日更新

足のしびれ・痛みに関する質問集


足の踵が痛みはじめ、次にふくらはぎから、太ももの後ろが痛みます。靴が合わないのでしょうか?
脊髄神経の図  典型的な坐骨神経痛の症状です。靴が直接の原因ではありませんが、足が敏感になり「靴が合わない。」と感じてしまいます。靴が当たって足が赤くなっている場合には、靴を変えれば良いのですが、それほど当たっていないのにビリビリ痛む事があります。足だけ見ても判らない難しい痛みです。坐骨神経痛の原因として、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などが多く見られます。

腰に原因のある坐骨神経痛でも、腰は痛くない事が多いので、ご本人は気づかなかったり、足と腰は関係無いと思う事があります。

 坐骨神経痛の治療と同時に刺激の少ない靴を履く必要があります。足の裏がビリビリする知覚過敏の場合には、非常に厚くて軟らかい素材の中敷きを作ります。裸足では刺激が強すぎるので、室内では同じ中敷きの入ったサンダルをお奨めします。

すべり症のX線と図  73歳女性の腰椎の側面X線写真です。数年前に腰の痛みが有りましたが、今は足の痛みだけなので、ご本人は足の病気と考えていました。

ところがX線写真を撮ると、重症の腰椎すべり症で、ご本人も驚いていました。お買い物の時などに重い物を持つのを避け、腹筋などの筋肉を着けてもらいました。靴には厚くて軟らかいオーダー・メードの中敷きを病院で作りました。腰からの神経痛により、足が敏感になっていますが、中敷きで長い距離を歩けるようになりました。

手の平と、足の裏がビリビリ痛みますが?
脊髄神経の図  首を通る脊髄神経、頸髄の病気で多く見られます。  左の図は足の「しびれ」の原因なる事が多い、頸髄、腰髄、神経根の位置を示しています。足の「しびれ」の原因となる足の知覚神経は、腰、頸を通って脳に通じています。そこで、足そのものに病気が無くとも、足がしびれる事が多くあります。

 レントゲン写真では見つからない事も多いのですが、MRIで撮影するとはっきりと判ります。頸椎椎間板ヘルニア後縦靱帯骨化症が頻繁に見られます。

頸椎椎間板ヘルニアのMRIと図  40歳女性の頸髄のMRIです。頸椎椎間板ヘルニアで脊髄が圧迫されています。レントゲン写真では診断できませんでした。ご本人は「肩凝り」や「寝違い」に悩まされていましたが、時々、手足がしびれます。この方も足がしびれるのは足の病気だとご本人は思っていました。

 整形外科、神経内科、脳神経外科の専門医であれば外来で毎日見る程度の非常に多い病気です。稀ですが、歩くのがよろついたり、手の力が入らなくなる等、重症になれば手術が必要になります。


外反母趾ですが、親指が靴を履かなくてもビリビリ痛みますが?
外反母趾写真 多いのは、外反母趾のために骨棘ができ、指神経を圧迫している場合です。

 外反母趾で細い靴を履いていると、母趾が曲がるだけではなく、押された部分の骨がトゲのように出っ張ってきます。これを骨棘と呼びます。

指神経の図  触ってみると、皮膚の直下の骨が飛び出していますから、靴を変えてもこの痛みは取れません。この骨棘の上に指神経が乗っている時には特に痛みが強く、親指の半分の面積の感覚が鈍くなります。多くの場合、手術が必要です。
 足に原因があるばかりでなく、足に行く神経は、上図の腰髄や神経根が圧迫される事が多く、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどで足に痛み、しびれがでます。神経が2箇所で圧迫される事も多く、腰の病気があるために、足が敏感になります。例えば腰が原因でも靴の中敷きを直す事で痛みを軽くできます。

つま先立ちをすると3,4趾の間がビリビリ痛みますが?
モートン神経腫の足の写真 写真の斜線部が感覚が鈍くなっており、裏から押すと強い痛みがあります。

指の間の神経が圧迫されて痺れる趾間神経炎(inter digital neuritis)です。モートン病と呼びますが、ドイツ語圏や日本では主に神経の塊が出来た時に、モートン神経腫(Morton's neuroma)と呼び、英語圏では神経腫を含めてモートンの中足部痛(Morton's metatarsalgia)と言います。

 外反母趾と同様に開張足が原因です。開張足では趾間神経の通り道が狭くなり、圧迫されて痛み、圧迫のための神経腫が出来る事があります。軽症では横アーチを支える、整形靴に厚い中敷きを入れれば痛みが軽減します。

 歩けないほど強い痛みが持続する場合には、手術により神経腫を取り除きます。神経も一部切除しますので、その部だけ、鈍くなりますが歩くのは楽になります。

土踏まずから踵がビリビリ痛み、内くるぶしを押すと激痛がありますが?
足根管症候群の写真 足根管症候群の症状です。歩けないほどの痛みが有る場合には手術を行います。末梢神経伝導速度を計測すると、遅れが認められる事があります。

 この写真は70歳の女性、足根管症候群の術前写真、斜線部に放散痛があります。足根管、つまり内果の下を押すと痛みがひびきます。足根管拡大術、神経剥離を行いました。術後、痛みは減少して歩けるようになりました。軽い痺れが残っています。


紐靴を履くと、足の甲がビリビリと痛みますが?
内側足背皮神経絞扼性障害 写真の斜線部が感覚が鈍くなっており、矢印の部分が神経が圧迫されているため、軽く叩く斜線の部分に響きます。まず靴のベロを軟らかい材質にします。

 専門家向けの説明: 内側足背皮神経絞扼性障害(ないそく そくはい ひしんけい こうやくせい しょうがい )

細いパンプスを履いてから、足の甲の外側がビリビリ痛みますが?
パンプスのトップラインによる神経拘扼の写真  パンプスのトップラインが神経を圧迫しています。我慢してパンプスを履いていると神経が変化を起こして、靴を脱いでも痛みが残る事があります。お洒落靴は短い時間だけ履くようにお奨めします。

 (専門家向けの説明: 外側足背皮神経絞扼性障害 (がいそく そくはい ひしんけい こうやくせい しょうがい ): 黄色い線は外側足背皮神経の走行を示しており、青矢印部にTinel徴候を認め、斜線部に知覚鈍麻を認めます。)

足首の前から、足の甲がビリビリ痛みますが?
前足根管  前足根管症候群が最も可能性が高いです。前足根管とは写真の青い矢印で示した範囲がトンネルになっていて、中に血管と神経が通っています。この神経 (深腓骨神経) が圧迫されてしびれ、痛みが出るのが足根管症候群です。良性腫瘍であるガングリオンや骨棘により圧迫されている事があります。

足の母趾と2趾の間がビリビリ痛みますが?
深腓骨神経   この写真は、しびれの場所を患者さんに印を付けてもらった例です。この母趾と2趾の間は深腓骨神経  (しんひこつ しんけい ) の支配領域です。深腓骨神経は内外の踝の間から2趾に向かって深い層を走っており、リスフラン関節症による圧迫を受け易いです。

上の紐靴により足の甲がしびれる原因となる、内側足背皮神経は浅い層を通って、支配領域が違うのが判ります。



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