dr-machida.com 2002年12月17日更新

以下は2002年10月24, 25日 第51東日本整形災害外科学会(福島市)にて発表した抄録である。
形状記憶合金プレートと超弾性ワイヤーによる陥入爪 の治療

町田英一
高田馬場病院整形外科 〒171-0033豊島区高田3丁目8の9
Tel. 03-3971-5114 Fax 03-5338-8306


【目的】難治な陥入爪を超弾性ワイヤーを主とした保存療法のみで治療し評価する。

【方法】深爪後の陥入爪では形状記憶合金プレートを貼り、爪の近位部を矯正して、先端の角にはcotton packing、硝酸銀処置を行って爪の先端が軟部組織から2mm程度伸びるまで待つ。爪の先端に横に並んだ2つの穴を注射針で開け、爪矯正用の超弾性ワイヤー(多摩メディカル社)を横方向に底側-背側-底側に逆U字型に刺入する。1から2カ月間ごとに入れ替える。爪矯正開始から2年以上経過観察できた難治の陥入爪42例について検討した。

【結果】爪の薄い例では即座に矯正され始めて、痛みが消失する。しかし、数ヶ月以上にわたり深爪をしている例では、肉芽、炎症が消退するまでに6から10ヵ月かかった。この治療による重大な合併症は無かった。2例に爪の穴からの横割れが生じたため爪が伸びるまで使用を延期した。4例は約1年後に再発したが、ワイヤーを再度刺入して、短期間で治癒した。

【結語】爪の矯正治療(Orthonyxie)は英国で始まりドイツを中心に広まっている。従来のプラスチックや金属ワイヤーでは矯正力が持続できない等の欠点から、重症例に対して充分な効果は得られない。超弾性ワイヤーはニッケル・チタニウム合金であり、弯曲を強くしても一定の弾力が長期間持続する。 深爪の例には形状記憶合金プレートを貼り、爪の先端が軟部組織から出たら超弾性ワイヤーを逆U字型に刺入して用いることで比較的短期間で治療できる。難治例では爪を薄く削ったり、硝酸銀を用いるなど併用療法が必要である。


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