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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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陥入爪と巻き爪に対する世界の治療法1---爪矯正

  世界中で行われている色々な保存療法(手術以外の方法)を歴史を含めて紹介します。太字は著者が現在、行っている方法です。
マチプレートMD (形状記憶合金プレート)、マチワイヤMD (超弾性ワイヤー、形状記憶合金ワイヤー)の詳細は多摩メディカル社のホーム・ページを御覧ください。

  • 飲み薬・注射    
  • 塗り薬
  • 爪矯正 (orthonixie)
    • コットン・パッキング (cotton packing)
    • チューブによる爪スプリント(Nail splinting by flexible tube)(Klaus W. Schulte1998)
    • 爪剥削 (nail abrasion)
      電動のヤスリで爪を薄くします。肥厚爪、爪白癬の場合に有効です。
    • 爪矯正具 ( nail correction devices, der Nagelkorrectur waren)
      • Rosenstein (イングランド, UK,1938)
        爪に穴を開けて糸を通して引っ張り、爪が矯正できることを証明しました。   
      • Scholl (イングランド, UK,1946)
      • Gifford (テキサス,USA,1960)
      • Fraser I (スコットランド, UK,1962)
      • Fraser II (スコットランド, UK,1963)
      • Waldmann IとII ( ベルギー,1964)
      • Rading (スウェーデン,1968)
      • Kitzka (ドイツ,1970)
      • Gorkiewicz (オーストリア,1977)
      • Eriki-Tecknik (ドイツ,1982)
      • Link-Methode (ドイツ,1982)
      • Nagelvollprotese von Erkodent (ドイツ,1983)
      • B/Sブレース (BS-spange, B/S brace, Bernd Stolz社 ドイツ,1987)
      • VHO (Elvira Osthold ドイツ1988)
      • ゴールドシュパンゲ(Goldspange Ruck氏 ドイツ1990)
      • オニクリップ (Onyclip  Erkodent社 ドイツ 1990)
      • マチプレート(Machiplate : 形状記憶合金プレート shape memory alloy plate,町田, 日本1996)
      • マチワイヤ(超弾性ワイヤー super elastic wire 町田, 日本1999) これがベストだと思います。
抗生物質(antibiotics)
いわゆる化膿止めです。軟膏、注射、飲み薬があります。

○利点: 細菌を強力に抑制する薬です。爪の角の物理的な刺激でおこる陥入爪では極く限られた期間だけ使うのが良い方法です。

×欠点: 原因となっている爪の角が刺さっているのを放置して、漫然と使い続けると耐性菌が発生する危険があります。つまり、薬に弱い細菌は死に、強い細菌が増えてしまいます。特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌)が発生すると、特別な抗生物質しか効きません。MRSAは元気な人にはなんでもない菌なのですが、体力の無い人、弱い場所には危険な細菌です。

消炎鎮痛剤 (antiphlogisitc agent)
いわゆる痛み止めです。飲み薬、軟膏、坐薬、注射があります。

○利点: 痛みと腫れを減らします。痛みが特に強い期間だけ使うのが良い方法です。

×欠点: 原因となっている爪の角が刺さっているのを放置して、漫然と使い続けると胃腸障害などの副作用があります。

尿素軟膏 (urea ointment) 例:ウレパール軟膏
皮膚を軟らかくする塗り薬です。爪に毎日塗ると軟らかくなります。単独ではそれほど役立ちませんが、硬い弯曲爪に爪矯正と同時に行うと有効です。ODT療法、つまり切手大の電子レンジ用のラップを塗り薬を塗ってから貼ると作用が強く出ます。

○利点: 安価で有効です。副作用は無く、薬による痛みも有りません。止めれば元の硬さの爪に戻ります。

×欠点: 爪が軟らかくなるまで時間が掛かり、やや面倒です。

硝酸銀 (silver nitrate)
硝酸銀の写真  爪が刺さった部分の軟部組織(肉)の痛み炎症が軽くなります。文献には硝酸銀"棒"(silver nitrate stick)による方法が記載されていますが、棒は生産されていません。小ビンに入った粒状の硝酸銀が日本薬局方に収載され、医療機関で取り扱います。スズケンなどの薬品問屋で納品されます。

 滅菌水、生理食塩水で肉芽を湿らせて、硝酸銀をピンセットでつまみ、30秒間くらい接触させます。1-2時間で塗った皮膚が黒くなります。コットンパッキングを行って、肉芽を少し押して小さくします。

 正常な皮膚に硝酸銀の溶液が着くと表面の色が黒くなりますが特に悪影響はありません。なるべく早く水で洗い流してください。4週間くらいで色は落ちます。

○利点: 凍結法よりも痛みが少なく、麻酔は必要ありません。肉芽が小さくなるので、膿、浸出液に対するドレナージ効果が期待できます。

×欠点: 硝酸銀の量が多いと少し痛みます。皮膚、爪の色が一時的に黒くなります。爪を平らにする作用は無いので、爪の角が肉から出なければ肉芽はなくなりません。


コットン・パッキング(cotton packing)
cotton packingの写真  すでに18世紀から行われている方法です。尖ったピンセットで爪の角に米粒くらいの大きさの乾いた綿花を入れます。毎日、入浴後にすこしずつ綿を詰めると肉がどいて、トンネルができ、爪が肉に刺さらなくなります。

○利点: 自分で簡単に出来ます。

×欠点: 綿を詰めすぎて爪が割れると、その手前の角が刺さり一時、悪化してしまいます。


チューブによる爪スプリント(Nail splinting by flexible tube)
tube splintingの写真 tube splinting 2週間後の写真  爪の縁に点滴用のビニールチューブを縦に切れ目を入れて差し込みます。左はtubeを入れた直後、右は2週間後です。肉芽が小さくなり、周囲の軟部組織の発赤も減っています。

爪の形は変わりませんが、一時的な処置としては大変良い方法です。
詳細は肉芽の処置をご覧ください。

○利点: 数日で爪周囲の炎症が消退します。コットンパッキングを数日間行った後ならば、局所麻酔無しで入れる事もできます。

×欠点: 通常は局所麻酔が必要です。時々、脱落する事があります。一時的に炎症を抑えますが、爪の形は変わらないので短期間で高率に再発します。

BS-spange, B/S brace
B/S braceの写真  弾力のあるプラスチックの板で、接着剤で爪の表面に貼り付けます。

○利点: 安価です。処置料込みで1枚4,000 円で行われています。

×欠点: 貼るのに手間と時間が掛かります。矯正力が弱く、持続しません。

VHO (Virtuose human orthonyxie )
VHOの写真  硬い金属製ワイヤーを爪の縁にかけて、爪の中央部でワイヤーのループを作り、少しずつ巻いて爪を矯正します。

○利点: 頻繁にループを捻れば強力な矯正力があります。ドイツではフスフレーガー(フット・ケアー)が行っています。ドイツで一時健康保険が適用されたのですが、経済により自費となっているそうです。

×欠点: 矯正力が持続しません。トランペット型に巻いている場合には装着時に痛みがあります。装着は難しく、研修を受けた人が行います。日本では処置料込みで1指15,000 円程度で行われています。

ゴールドシュパンゲ (Goldspange)
Goldspangeの写真
 弾力のある金色の金属製板バネをワイヤーを爪の縁にかけて、爪を矯正します。

○利点: ドイツではフスフレーガー(フット・ケアー)が行います。

×欠点: 矯正力が持続しません。トランペット型に巻いている場合には使えません。

マチプレートMD (形状記憶合金プレート : shape memory alloy plate )
マチプレートの写真 外科用接着剤で爪に張り付けてヘア・ドライヤーで一日に2-3回温めます。

○利点:  常温では軟らかい板バネなので爪が短くても簡単に貼れます。温めると矯正力が回復します。再使用できます。

×欠点: 矯正力がマチワイヤよりも弱い。材料が1枚、1指で2,000円で再使用できます。

マチワイヤMD (形状記憶合金ワイヤー ・超弾性ワイヤー : super elastic wire )
“マチワイヤーMDの写真"  常温では軟らかい直線状のバネで、爪に穴を開けて装着します。温める必要はありません。材料は1本、2-4指分で4,000円です。
○利点:  装着は5分間くらいと簡単です。矯正力は数カ月間持続しますから、1-2カ月ごとに取り替えます。再使用はできません。細いマチワイヤーMDを用いれば、手指や足の母趾以外にも使えます。

×欠点: 爪が伸びて白いところが無いと使えません。矯正力が強すぎて爪が横に割れることがあります。その場合にはコットンパッキングをして爪が伸びるのを待ち、再び行います。


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