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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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2018年2月22日更新
変形性リスフラン関節症に関する質問集
( 原発性リスフラン関節症・足根中足関節症・Tarsometatarsal Joint Arthritis )
リスフラン関節症とは?

lisfr_yn63_ph_drm.jpg  この写真は外反母趾に伴って、足の甲の骨が隆起している例です。この方は外反母趾の痛みは無く、リスフラン関節症の痛みが強いです。

 リスフラン関節症は変形性関節症で、外傷 (事故等の怪我)で発生する場合と、扁平足、外反母趾などに伴いより徐々に発生する事があります。どちらも、リスフラン関節の痛みや、骨の一部が隆起して靴に当たって痛みが出る事があります。

外傷後のリスフラン関節症は整形外科医に良く知られていますが、慢性的な例は知られていません。
リスフラン関節はどこ?

Lisfranc.photo.jpg リスフラン関節とは5つの足根中足関節の総称です。(日本整形外科学会用語集より) リスフラン関節は足の縦アーチの中心近くにあり、体重の負荷により強い力を受けます。特に扁平足、外反母趾になると足のアーチが下がりますので変形、痛みが出ます。


Lisfranc_anatomy.jpg X線写真ではリスフラン関節は5本の中足骨と楔状骨、立方骨の間にあります。

 リスフランはナポレオン時代にフランスの医師リスフラン (1790 - 1847) が記載してから呼ばれています。

リスフラン関節脱臼とは?

lisfran_dislocation_xp.jpg X線写真で患側、右足のリスフラン関節が開いています。軽度のリスフラン関節脱臼で良く見ないと判りません。歩くと強い痛みがあります。

強い外力、交通事故や転落事故によるリスフラン関節脱臼は慢性的な変形性リスフラン関節症とは違います。

変形性リスフラン関節症の症状は?

Lisfranc_photo_69f.jpg 骨の隆起が神経(深腓骨神経)を圧迫すると、その神経の支配領域にしびれ、知覚鈍麻を生じます。この写真の横線部が支配領域です。

手術では深腓骨神経を触る事があるために医師は特に注意して行います。
Lisfranc_photo_69f.jpg リスフラン関節の部分に骨の隆起があります。触ってみて、骨隆起が骨棘 (こつきょく) つまり先端が尖っている場合には強い痛みが有ります。

変形性リスフラン関節症の診断は?

Lisfranc_xp_lat_69f.jpg 上の症例のX線写真では、岩の様に不規則にリスフラン関節のフチの部分に骨の隆起があります。
Lisfranc_ct.jpg CT画像です。右足は背側に大きく骨隆起があります。
Lisfranc_3dct.jpg 同じ例の3D CT画像です。3Dで観察すると、どの部分が隆起しているかがはっきりと判ります。
Lisfranc.xp_ap_lat.jpg 18歳 女性のX線写真です。若い方でもリスフラン関節症になります。ハイヒールが原因と考えられます。

mri_Lisfranc_small.jpg MRIではリスフラン関節の極めて強い変化が見られます。 ところが、X線写真の変化は僅かなので見逃される事が多いです。

変形性リスフラン関節症の靴による治療は?

Lisfranc_insole.jpg  外反母趾、扁平足ではリスフラン関節に強い力が集中しますから、足底の圧力をドイツ式の厚いオーダー・インソールにより調整します。そのため、厚い中敷きの取り外せるドイツ整形靴が最も優れています。
一般の薄い中敷きでは効果が有りません。
Lisfranc_tong.jpg 整形靴のベロの部分を骨の隆起部に合わせて削り、当たらないように加工します。
Lisfranc_sandal.jpg 足の甲の骨が尖っているために、強い痛みがある場合には、厚い中敷きの交換できるサンダル型の整形靴を用いて、ストラップを加工して当たらないようにします。

変形性リスフラン関節症の手術は?

lisfranc_pre_post_op.jpg 手術せずに、靴とインソールの調整により痛みが取れる事が多いので、手術は一般的にお勧めしません。骨の隆起が大きく、 靴による治療は痛みが軽くならない時に限り手術を行います。

私は足関節ブロック麻酔で行いますので全身麻酔、腰椎麻酔は必要有りません。手術時間は30分間くらいです。入院は3日間から2週間くらいで、松葉杖をうまく使える方は早く退院できます。手術費用は外反母趾と同じくらいです。
lisfranc_60_pre_op_xp_txt.jpg同じ例の手術前のX線写真です。リスフラン関節ぶで骨の尖った隆起、つまり骨棘が見られます。
lisfranc_60_post_op_xp.jpg骨棘の切除、術後です。

文献

Lisfranc, J (1815) (in French). Nouvelle méthode opératoire pour l'amputation partielle du pied dans son articulation tarso-métatarsienne: méthode précédée des nombreuses modifications qu'a subies celle de Chopart. Paris: L’imprimerie de Feuguery. pp. 1–52.04

田中康仁・他,原発性変形性リスフラン関節症の病態,日本足の外科学会雑誌,19(2), 123-126, 1998

伊東勝也・他,原発性変形性リスフラン関節症のX線学的検討,日本足の外科学会雑誌 74(2), S242, 2000

Robert G. Parker, DPM , Dorsal Foot Pain Due to Compression of the Deep Peroneal Nerve by Exostosis of the Metatarsocuneiform Joint,Journal of the American Podiatric Medical Association,Volume 95 Number 5 455-458 2005
楔状骨中足関節の外骨腫から深腓骨神経圧迫による足背部痛

リンク
英文 米国整形外科 足の外科学会の解説 
Tarsometatarsal Joint Arthritis

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